「だめ」
「なんでだよー」






旧女子寮は紅の住人に開放したため、私やアキラちゃんは旧男子寮に住むことになった。
だから、部屋の前に男子がいることは…不自然では、ないのだけど。






「…もう、遊んだでしょう?」
「足りないー。おれはまだ不足なの」




私がドアノブを捻れば、そこは私の部屋。
……今、彼がレスポールであると分かっているけど、部屋に入れるのは、少しまずい気がする。
(彼が飽きたら、帰るって分かってるけど)




決して腕を放してくれない彼と目を合わせず、逡巡する。
…迷わず、帰ってもらえば…いいのに…
















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そして、おれの下にがいる。




「やだ…!や…っ」




悩んだのちはおれを部屋に招き入れた。
おれは、を組み敷いて首を舐める。






「おれをいれたが悪いんだろ?…分かってた、くせに」






おれはが好きだと気付いたし、
だっておれのことが好きっておれは気付いてる。
だから、こうやって触れて愛してやろうとしてるのに。






「やだ、やだよレス…お願い…やめて…」






おれがタクトと一緒になってから、少し困ったように眉を動かすことが多くなった。
それがちょっと面白くて、ちょっと苛ついて。
もっともっと、表情を崩したい。おれだけに見せる顔をもっと、もっと。






「僕が相手じゃ不満なのか?…」




タクトの真似をして耳元で囁くと、びくっとが震えた。
どんな顔になったかな。








「……やだ…ぅっ…ぇ……」






逸らされた顔からぼろぼろこぼれる大粒の涙。
おれが、泣かせた?






「なー」
「やだよ……だよ…っ」






いつだって、落ち着いた表情をしていて
たまに困ったように瞳を揺らして
…でも、泣いたとこも笑ったとこも見せてくんない、お前を、泣かせた。








「レス…レス…」
…おれ」
「……ぇっ…ぅう…ぁ……」




嗚咽を繰り返すのを見て、掴んでいた腕を思わず放す。
すると腕で顔を覆って、本当に泣き出してしまった。






「………」




どうしたらいいか、分かんなくて。
ただ、の上での泣き顔を見てた…












「レス…じゃ…なきゃ……やだ…よ…」




少しして、嗚咽まじりにが漏らす。






「レス…って…分かっ…る…けどっ…」
「でもっ……レスじゃ……」






おれの聞き間違えじゃなきゃ、今の言葉は本当は嬉しい言葉で。
タクトの外見をしているから…嫌だと。
つまりおれがおれだったら、泣かないのか?






…おれ…」
「ご…め……さい……っ…」




おれがおれでさえいれば、いいと思ってたけど
青の人間は、いろいろ馬鹿みたいに考えるから。
……やっぱり、おれはおれでないとダメってこと。


















はじけて
まざって
とけて
わかれて












..............
.........
......
...










「レスポール!」





気がついたら、おれの首根っこを掴むタクトがいて。
何だよ、タクトー。今いいとこ…あ。








「……れ……す?たく、と?」






は、目を見開いて、こちらを見ている。
行き場のなかった腕は肌色から、白に戻ってた。




「…ふーん、女神サマサマかー」






アキラが紅の住人を拒否してないから、戻るのもOKってこと?
まぁ、難しいことは面白くないし、どうでもいいや。
おれはおれで、タクトはタクトでいいじゃんか。






「レス!出るぞ!!」
「えー!」
「えー!じゃない!!」




タクトに引っ張られて、ベッドからおろされる。
というかドアまで引っ張られる。
何だよタクト、暴力反対だぞー






「え、…あ…」






びっくりした顔のままのは、ドアまできたおれとタクトを見て瞬きをしたあと、
少しだけ、口元を上げて、笑った。






「…おかえりなさい」








の帰還








今日は、それだけで我慢してやるよ。
(レス!!動け!!!)