「あー、もううるさい!」
せっかくタクトに盛大な悪戯を仕掛けている夢を見ていたのに
バカナンデスのうるさいいびきのせいで、覚めてしまった。
一蹴り入れてみたけど、んがっ、といつも通り間抜けそうな声が出ただけで
うるさいいびきは止まらない。
なんで他のやつらは起きないんだろ。理解できないねー。
とりあえず、この部屋から出よう。
LAG内をうろちょろしてもつまんないし、海岸の方にでも出よっかな。
そういう、ふとした行動は本当に偶然で。
月明かりの下、アイツと会ったのは、おれにとって意外以外のなにものでもなかった。
「…?いーけないんだーもー良い子は寝る時間だぞー」
浜辺に一人ぽつんと座っていたに声をかけると、ゆっくりこちらを向く。
いつも通り、落ち着いた顔だ。
「レス、あなたこそどうしたの?」
「バカナンデスのいびきがうるさいから、散歩。お前は?」
「……お月見、かな」
「ふーん」
隣に腰を下ろすと海が見えるだけで、月はそんなに見えない。
やっぱり、こいつは嘘付きだ。
「お前バレバレの嘘付くよなー」
「そうかな…ごめんなさいね」
こいつの生き方なんてしったこっちゃないけど
バカナンデスの方が、見ていてすっきりする。
もっと、素直に生きればいいのに。
生きてるからこそ、遊べるしからかえるし、壊せるのに。
「お前、死んでるみたいだよなー」
「……そうかもしれないね」
ほら、怒らない。
つまらない。
「でも私は生きたいよ。生きたいと思ってる」
その言葉は、少しだけ力がこもっていて。
…少しだけ、感情がその音を通して、おれに伝わった気がした。
「死ぬのは怖いし……私が死ねば、私の中のフュンフのみんなが本当に死んで、消えてしまう」
だから、死なない。死ねない。
そう呟いたの横顔は、少しだけ寂しそうに見えた。きっと、おれの気のせいだろうけど。
「もっと楽しめよー」
「…楽しむ?」
「死んだヤツのこと思うのは勝手だけど、
遊べるのも作るのも壊せるのも全部生きてる間しか出来ないんだし」
「でも」
「死んじゃったらつまんないぞー」
きっとおれとの生き方は違う。
でも、いつか死ぬのは一緒。
「死ぬまでは楽しんで過ごせばいーじゃん。後悔とかは死んでからにしろよなー」
黙って聞いていたは、少し悩んでいるみたいだった。
おれがそう気付くぐらい、無表情は少し揺らいでいて。
それがちょっと嬉しい、と思ったのは多分おれの気の迷い。
「もーちょっと、お前は遊んでいいと思うぞー」
なんとなく、頭を撫でてやった。
自分でやっといて、ユゥジのおせっかいみたいで、変な気分。
でも、今日座って話して、なんとなく分かった。
こいつもまだ子供なんだなーって。だから、おれは遊ぶ楽しさを教えてやろーかなと思う。
大きな子供と小さな子供
「ありがとう、レスポール」
その響きはいつもと違う音色だった。