「お前、ホント笑わなくてつまんなーい」
「私の仕事は機器メンテナンスであって、貴方の接待ではないもの」
ぷろぐらむ、を組んでいるはこっちを向かない。
初めて顔を合わせた時から、口周りの筋肉以外殆ど動かしてない。
タクトでも笑うときは笑うし、怒るときは怒るのに。
というか、タクトはホント怒り過ぎだよなー、あれはハゲるぞー。今度言ってやろー。
じゃなくて。
おれに今背を向けてるは、本当に笑わない。
いくらこしょばしても、驚かせても、ワライダケを仕込んでも笑わない。
無表情のお面を被ってるのかと頬を引っ張ってみた時は、
タクトやカズキよりちょっと柔らかいだけで、普通の頬だった。
「なー、仕事遅いぞー」
「私も仕事が終わればあなたと遊びたいんだけど」
はすぐこんなことを言う。
絶対、仕事が終わったらまた次の仕事をするのに
口では「遊びたい」「ありがとう好きよ」なんてスラスラと言う。
こっちの人間って、もっと感情に即した言葉を出せばいいのに。
は、チグハグな感じがして、見ていてムズムズする。
だからついこうやって、話しかけちゃうんだ。
(別に、お前が心配とかじゃないからな)
(ありがとう、心配してくれて。嬉しいわ、レス)
「お前は嘘つきじゃないけど嘘つきだよなー」
「レスがそう思うなら、そうね」
ずっと止まらない指先を止めたいと思ったけど
前に邪魔したらソーイチローがおやつ抜きにしてきたから、実行はしない。
ただ、そろそろつまらなさが限界。
目の前にある、いれてから大分経っているの紅茶に砂糖をいれた。
ざぷん。
もう飲まない紅茶に溶けずに盛り上がっていく砂糖。
すぐに、紅茶よりも高い山が出来た。
「ありがとう、レス」
キーボードを触っていた片手がスプーンに伸びて、
さっきの砂糖を無理矢理かき混ぜている。液体というより、固体だ。
「ぅげー…それ、飲むのか?」
「だってレスが仕事で疲れた私のために入れてくれたんでしょう?飲まなきゃ失礼じゃない」
そういって、最早水分を含んだ砂糖を一気に飲み下す。
喉を二、三度鳴らして、また口を開く。
「ありがとうレス。貴方のあまい思いは存分に伝わったわ」
は悪戯をしても笑わないし怒らない。
口を開けば、おれを褒める。
そんなコイツがちょっと苦手だけど、暇だから絡んでしまうんだ。
甘くない彼女と甘いティータイムを
「ふぅ、仕事終わった」
「!」